
酒造りの決意
私は20歳の時、祖父の会社を継ぐ為この地(徳地)へ
移り住みました。
以来、増野杜氏の下で日夜酒造りをして参りましたが、
平成19年冬、老齢の為杜氏も蔵人も酒造りができなくなり、酒蔵存続の危機を迎えました。
しかし危機的状況こそチャンス、長年温めて来た夢を今こそ実現させようと、自分ひとりでもやっていく決意を固め、平成19年3月、小仕込み用のタンクを設けて四季醸造蔵へと改装しました。
現在、毎月2回新酒が出るペースで日本酒を造っています。
まだまだ試行錯誤の日々ですが、確実に手ごたえを感じています。
ひとりでもこんな日本酒造り、しています
●原料処理:
吟醸酒からレギュラー酒まで、全てのお酒の仕込みで洗米後に限定吸水という浸漬方法をとっています。
これは原料米の品種から精米歩合まで、それぞれにあった吸水時間を設定して浸漬させます。
●製麹:
お酒の原料となる米のデンプンは、ブドウ糖が繋がった状態で存在するので、そのままでは酵母が発酵する事ができません。
そこで麹菌が成長する時に出る糖化酵素を利用します。
蒸米に麹菌を繁殖させて麹米をつくります。
麹菌が蒸米に繁殖していく様子を破精込み(はぜこみ)と言います。
破精込みにもいくつか種類があって、吟醸酒に向いている突き破精を目標に麹を造っています。
≪米を蒸しています≫
●酒母製造:
お酒造りに欠かせない酵母を培養したのが酒母です。
中温速醸という方法をとっています。当蔵では泡あり酵母を使用しています。
≪泡あり酵母≫
●醪工程:
仕込むお酒の種類によって、仕込み日数を18~30日に設定しています。
特定名称酒は低温で発酵させて仕込み日数を多めにしています。
その方が味の奇麗なお酒に仕上がります。
●上槽:
所謂「搾り」の事です。
1回の仕込みが少量という事を生かして、醪は仕込みタンクから槽まではポンプを使わず、試桶を使って人力で移動させます。
これはポンプで移動すると、醪の中にある米を潰してしまい、良いお酒にならないという事からです。
搾り機は昔からある槽(ふね)と呼ばれる型の搾り機を使います。
しかも天秤式の様につねに圧力を掛けて搾るタイプの搾り機で、これも醪中の米を潰さない仕様になっています。
≪搾り中≫
●おり引き:
搾った直後のお酒には色んな成分が含まれています。
1週間ほどそっとしておくとそれらがタンクの底に沈んでオリと呼ばれる物ができます。
そして上澄みとオリを分離します。
●濾過:
濾過は瓶詰前に行い、本来のお酒らしさを出すために極力最小限の濾過しか行いません。
●火入れ:通常は貯蔵前に1回、瓶詰時に1回と合計2回行いますが火入れは瓶詰工程と同時に行います。
●貯蔵:
小仕込みで常に新しい清酒を送り出すために瓶詰貯蔵にしています。
仕込み水について
水は清酒の約85%を占め、良質な水は良酒を造る必要条件です。
当蔵は仕込み水に地元小古祖地区の花崗岩層を浸透して湧き出してきた、鉄分含有0の弱軟水有料天然水を使用しています。
当蔵のある徳地地域は水道水の家庭はありません。家庭の水も100%井戸水です。とてもきれいな水なのです。余談ですが、私の友人は結婚後、徳地の隣町に住みましたが、水が合わず体調を崩し、米炊き用の水や飲用の水は徳地から持って帰っているそうです。
そしてここの水は鉄分を殆ど含んでいません。清酒に混入した鉄は、麹の生産する環状ペプチド(6個のアミノ酸が結合した分子)と結合し、赤褐色のフェリクシンという化合物を造ります。そしてこのフェリクシンは清酒の味の劣化を進めます。
≪一級河川 佐波川≫
またフェリクシンは活性炭に吸着されにくく、清酒からの除去は困難です。従って酒造りに鉄分0の水を使用できることは、おいしい日本酒を造るにはとても有難いのです。
他の成分にも良い役割があり、カルシウム、クロールは麹菌の酸素の生産と酵素の溶出を促進し発酵を盛んにしますし、マグネシウムは麹菌及び酵母の栄養になり生育に必要です。そして水素イオン濃度はpH6~8までが醸造用水に適するといわれています。
当蔵の仕込み水がとても酒造に適していることがわかります。
最近の水質検査結果(山口県予防保健協会:H23年2月検査)
| 検査項目 | 単位 | 検査結果 | 水質基準 |
| 一般細菌 | 個/mL | 0 | 100以下 |
| 大腸菌 | 不検出 | 検出されないこと | |
| 硫酸態窒素及び | |||
| 亜硫酸態窒素 | mg/L | 1.6 | 10以下 |
| 鉄及びその化合物 | mg/L | 0・03未満 | 0.3以下 |
| 塩化物イオン | mg/L | 20.4 | 200以下 |
| カルシウム、 | |||
| マグネシウム等(硬度) | mg/L | 35 | 300以下 |
| 有機物 | mg/L | 0.4 | 3以下 |
| pH値 | 6.4 | 5.8以上8.6以下 | |
| 味 | 異常なし | 異常でないこと | |
| 臭気 | 異常なし | 異常でないこと | |
| 色度 | 度 | 0.5未満 | 5以下 |
| 濁度 | 度 | 0.05未満 | 2以下 |
| フッ素及び | |||
| その化合物 | mg/L | 0.21 | 0.8以下 |
使用しているお米について
●県内オリジナル酒米「西都の雫」とは?
幻の米「穀良都」を母方に、「西海222号(親:山田錦)」を父方として、交配・選抜した山口県独自の酒米です。高度精米が可能なことから、一般酒から吟醸酒などの高級酒まで幅広く利用できます。酒造適正に優れ、「淡麗でキレの良い」お酒ができます。
稈長は90cm程度と酒米品種の中では短く、倒れにくいため、栽培しやすく収量は酒米品種「山田錦」より10~15%多くなっています。





