酒豪の父親のもとで育ち、小さい頃からお酒が食卓にある風景が日常でした。子供心に、お酒は人の心を癒したり、人と人との仲を深めたり、魔法のようなものだという思いがしていました。

 

「日本酒」は生活必需品ではありませんが、太古の昔から、人と人とを繋げ、「食」をより豊かなものにし、国と国をも繋いで来た、なくてはならない重要なものだと思っています。そんな「日本酒」を造れることに誇りを持ち、感謝を忘れてはならないとも思います。

 

女性活躍社会と言われていますが、まだまだ業界は男社会だと思うことがしばしばあります。

私は「安室奈美恵」さんと同じ年であり、女子高生時代から数々のブームを巻き起こしてきたエネルギッシュな世代とも呼ばれています。日本酒業界においても、なくてはならない世代だと思っています。

安室奈美恵さん自身、出産を機に今後進むべき道を改めて考えるようになり、焦りもあったと打ち明けていますが、女性はキャリアを積む途中で、必ず結婚、出産や育児によって大きく人生が変化を遂げます。それをマイナス要因と捉えるきらいもありますが、出産や育児を経験した女性故に備わった「感性」は、他には得難いものであるとも思っています。

子育てをしながらの酒造りは、想像以上に苦難の道ではありますが、私はこの「感性」を持って醸し、同じように自分の歩むべき道に迷っている女性たちや、今まさに新世界へ歩み出そうとしている若き女性たちの背中を押す、飲んで美味しいだけじゃない「美酒」を醸したいと思っています。そして目指すのは「彩り多き時をつくり、心灯す酒」。楽しかった今日を共に喜び、辛かった今日は明日への糧となるように、誰かの、あなたの、私の、心を灯す酒となりますように。

                          杜氏 新谷文子